おおまかな説明を聞いた後、幾つかの質問をさせていただいた。
@未注射の犬の割合はどれぐらいか?
→ 6割ぐらいは いる。
A収容期間はどれぐらいか?
→ 1週間(以上)
収容した日を除いて7日とされている。
収容した動物は各保健所等にて公示が義務付けられている。
事務手続に2日、公示2日、収容2日 で、基本は7日は保護されている。
B本所では、「譲渡可能な」(健康で性格的に問題がない)犬猫は「殺処分」対象にならないと聞いた。
これは本当か?
→ 譲渡可能な犬猫は「なるべく」殺処分にならないようにはしている。
ただし、収容能力に限りがある。
殺処分になるものも出てくる。
1週間を過ぎた場合、その犬猫は東京都の所有物になる。
その中から、数が許せる限り、「譲渡可能な」犬猫と
「動物愛護精神の普及啓発活動の際に、一緒に連れて行く」
犬猫を選別し、それ以外は殺処分される。
譲渡可能な犬はセンターの飼い犬となる。
C東京都は、保護された犬猫に再度飼い主が見つかる可能性が高い都道府県だと聞いたが?
→犬の場合で言うと、17年度は2970頭保護されて、そのうちの1783頭が元の飼い主に返還されている。
約6割が元の飼い主に戻る計算だ。
この中には犬を保護した現地にて、飼い主が見つかるのが、約半分ほど含まれる。
また、譲渡件数も多い。
動物愛護団体による里親探し・引き取りも増えた。
東京が再度飼い主が見つかる可能性が高い都道府県である理由としては、
まず、都心部は放し飼いができないことがあげられる。
それと動物愛護団体の方が東京には多い。
意識が高い都道府県だと言える。
おそらくナンバーワンだろう。
D 殺処分の方法について教えてほしい。
→動物愛護法の制定により、なるべく苦痛のないやり方で処分しなければならなくなった。
以前はペントバルミタールナトリウムという麻酔薬を使って殺処分していた。
この法律ができてから、炭酸ガスによる殺処分をするようになった。(法的義務)
炭酸ガスを与えると、まず、麻痺をおこし、その後死に至る。
よって、より、苦痛は少ない方法とされている。
まず、炭酸ガスの処分機に殺処分する犬(猫)を入れる。
→ 約20秒ほどで気を失う。
→ そのまま10分ぐらい置いておく。
→ 完全に死亡する。
E 1回に何匹処分されるのか?
→カートには10匹ぐらい入っていても大丈夫だが、実際にはそんなに載せた事はない。(畳1畳分強)
焼却炉は2系列あり、8時間の勤務時間の中で、予備燃焼1時間、1回の燃焼に2時間掛かるため、
2時間×3回=6時間、つまり3回×2台=6回焼却可能。
しかし、実際にはそんなに動かさない。
動物保護団体の働きなどもあり、年々殺処分する犬は減ってきている。
17年度は662頭。
よって平均1日2頭ぐらいになる。
猫に関しては、殺処分されるほとんどが生まれたばかりの子猫である。
子猫は親なしで生きられる可能性が非常に低いため、すべて殺処分の対象となる。
子猫たちは、ここではなくて、2つのセンターで処分されている。
各センターに大型の処分機がある。よって、死体となった状態でこちらに送られてくる。
こちらで処分しない理由としては、各センターから週に3回の郵送便があるのだが、
送られてきた子猫たちも殺処分されるまでは、こちらでミルクを与えるなどの生育をする必要がある。
とてもそこまで手が回らないのが現状である。
※ちょっとここで、東京都の動物取扱頭数の変遷データを記載して
おく。(殺処分数ではない。)
年度 | 成犬 | 子犬 | 成猫 | 子猫 | うさぎ他 | 全体 |
S61 | 11,030 | 9,156 | 3,185 | 27,415 | 4 | 50,790 |
H7 | 5,644 | 1,021 | 1,453 | 13,056 | 24 | 21,198 |
H17 | 2,879 | 77 | 922 | 5,264 | 10 | 9,152 |
続いて、平成17年度の収容状況・殺処分状況データ
収容状況
所有者から | 拾得者から | 捕獲・収容 | 負傷動物収容 | |
成犬 | 373 | 1,054 | 1,376 | 76 |
子犬 | 17 | 37 | 21 | 2 |
成猫 | 416 | 26 | - | 480 |
子猫 | 383 | 4,873 | - | 8 |
ウサギ等 | - | - | - | 10 |
処分状況
収容数全体 | 返還 | 譲渡 | 致死処分 | |
犬 | 2,970 | 1,772 | 534 | 663 |
猫 | 6,186 | 10 | 250 | 5,922 |
ウサギ等 | 11 | 1 | 1 | 9 |
平成18年度実績はこちら
F以前にどこかのHPで、猫を処分する際は、生命力が強くて暴れてガスが効きにくいため、
麻袋に何頭も詰め込んでそしてガス室に入れると読んだことがある。
これは本当か?
→ 処分方法は犬と同じ。
麻袋に入れることはない。
過去においても、聞いたことはない。
G飼い主が飼えなくなった場合、動物愛護相談センターに連れて来るのではなく、
野山に捨ててくる人も多いのではないか?
→ 飼い主が飼えなくなった場合、そのほとんどが飢え死にする。
彼らは、親から食料や獲物を捕ることを教わっていない。
えさの捕り方を知らない犬猫にはほとんど無理だろう。
それよりは、センターで保護してあげて、新しい譲渡のチャンスをあげた方がよいと思う。
「飢え死に」というのは、最悪の結果だと思う。
H収容された子猫は育つ可能性が非常に低いため、全部殺処分の対象になるようだが、
一般人に子猫を親猫なしで生育することは可能か?
→ 大変ではあるが可能である。
最低限、以下のことを守らなければいけない。
○ 4〜5時間おきに動物用のミルクを(スポイトなどで)
飲ませる。
○ あったかい状態で保温する。
25℃以上は必要。
Iマイクロチップの普及率を教えてほしい。何頭ぐらい入れているか?
→ 本所のほうで、収容した犬猫に2種類の読み取り機をかけて、全頭調査している。
ここ3年間で、マイクロチップを検出したのが10頭いっていないだろう。
よって、普及率は0.1%もないだろう。
また、マイクロチップのリーダーも万能ではないので、数センチで誤差が出る。
よって、各センターで何種類かの読み取り機で身体中くまなく調査する。
念のため、最終処分場である城南島でも調査するが、今のところマイクロチップは見つかっていない。
交通事故死の犬猫については、基本的に清掃局が取り扱う。
清掃局ではマイクロチップの検査はしない。
J殺処分での安楽死はありえると思いますか?
→ 飼い主が、動物が行きなれている病院に連れて行ってそこで注射などでしてやれば、
それは、安楽死に「近い」と言えるかもしれない。
もちろん「=安楽死」ではない。
実際は獣医さんに殺処分するように持ち込む方は いるようだが、私の知っている限り、
半分ぐらいの獣医は殺処分を断るそうだ。
よって、獣医さんに断られたため、仕方なく、こちらに「処分してくれ」と持ち込んでくる方も多い。
K獣医として、治療でない仕事(殺処分など)もしていることについて、何か思うことがあれば教えてほしい。
→ 現在、城南島では、獣医5名・技術員1名・嘱託員1名
動物の飼養管理、処分・焼却は委託で2名 の構成で働いている。
この仕事は、誰かがやらねばならぬことである。
処分・焼却が委託なのは、経費の問題だと思う。
ただし、その作業の監理、死亡したかどうかの確認はこちらで行う。
L動物たちが処分されないで済む時代が来ると思われますか?
来るとしたら、あと何年後ぐらいだと思いますか?
→ 現状のままだったら、来ないと思う。
M一番変えて欲しい動物愛護法、管理法があれば教えて欲しい。
→ 違反者の摘発ができれば一番良い。
N猫の殺処分が多いのですが、それを減らすために有効な対策があれば、教えてください。
→ 放し飼いの猫は年に10匹子猫を生む。
一番効果的なのは、避妊・去勢手術である。
「猫の室内飼いと去勢・避妊手術」は東京の動物愛護相談センターの方針である。
もちろん、センターから譲渡する猫の飼い主の方には、このことをきちんと指導している。
O殺処分ゼロにするために、私たち一般人ができることはなんでしょう?
また、ペット法などをつくり、動物愛護保護センターで講習を受け、殺処分されている動物たちがいるという現状を教える
講習会を義務付けるのが効果があるのではないかと考えているがいかがか?
→ それよりは、犬猫譲渡のお手伝いをすることと、
「猫を登録制」にして、「室内飼い」を義務付けるのがよいかと思います。
P 動物愛護相談センター → ペットショップ という流れで動物を譲渡することはありますか?
→ それはない。ペットショップから預かることもない。
崩壊(倒産)したペットショップから、一時レスキューすることはあるが、
基本的には動物愛護団体がそれを行っている。